道南民俗学研究会

虚飾を捨てた文章を書きたい。

映画「キングダム」と時代背景

 画に主張がある。釣りあがった目、勢いのある線、キャラクターはみな一様に個性が強く、野心を秘めた風貌に見える。服装から彼らが古代中国人だということがわかる。

 キングダム、それは虐げられた者たちが共に王座へと駆け上がるような力強い響き。

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  時は紀元前3世紀。中国大陸で史上初の中華を統一する秦が誕生する。この映画は、後に秦の始皇帝を名乗る人物の周辺の人間模様を描いていて、史実をもとにしている創作コミックの実写化である。

 

 ストーリーから言えば脇役であるはずの楊端和(長澤まさみ)、王騎(大沢たかお)の存在感がすさまじい。本編は50巻まで刊行されているコミック5巻分に相当している。

  

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 注目ワード  「託したぞ。」

 

 託すは業務や任務の引継ぎを求める際に使う言葉である。

 任せるは、例えば阿弥陀仏信仰で「ともかくもあなた任せの年の暮れ」(小林一茶)とあるように、自らの意思は強く定めずに、相手の意志に心身をゆだねるという意味合いがある。

 対して、託すは自らの明瞭な意思の相続を相手に要求する言葉である。今、命を引き取ろうという人が内容の詳細を告げずに「託したぞ」と言い残した場合、両者の間には強い信頼関係と共有する運命があることが読み取れる。

 

 歴史的に

 紀元前3世紀、中国は七つの国に分裂している。秦国は長江の上流に位置する西の国である。稲作は長江流域に発祥の起源を持つとされる。さらに、秦には養蚕・機織りの技術があったことを合わせて考えると、我が国の弥生時代の訪れと関係がありそうである。その意味で、全くの他国の映画ではないというべきかもしれない。

 この映画の主人公の一人、秦の始皇帝は後に、不老不死の妙薬を東国の島国(日本)に求めて船団を派遣している(徐福伝説)。というより、秦が中華を統一するまでは五百年近く戦乱の世が続いていたということは、船に米と武器と一族を載せて長江を下り、結果として海流に乗り日本に漂着した人とかが多数いたのではないだろうか。

 

 見どころ

 

 後に始皇帝となる政と、政いわく難を逃れるための剣である信のやりとり。政の再起のキャスティングボードを握る山の民の存在。不気味かつ俯瞰的な動きを見せる大将軍・王騎の立ち居振る舞い。政の語る王座の意味。

 

 令和の初めに、キングダムという映画が上映され(4月19日初日)、2か月足らずで興行収入が54億円に達したたということは記録に値することである。

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