道南民俗学研究会

虚飾を捨てた文章を書きたい。

2021-03-01から1ヶ月間の記事一覧

我ら一同、いずれ死せる身なれば

先月、94歳で一人暮らしをしていると言う女性と職場で1時間ほど世間話をしました。再び、来訪するのがいつかわからず一期一会と言うべき出会いでした。長寿の秘訣を聞くと、夜中の3時に起きてラジオで懐メロを聴く、そのため朝の起床は遅い。肉類をよく食べ…

天は役目なしに降ろしたものはない

アイヌ民族のことわざ。ここで言う天とは何か。また、それは実在するものであるのか。せっかくの機会に彼らの伝承を記録したものを改めて1時間でも紐解いてみたい。 彼らの思想によれば、カムイ(神・命)は天と地を遊ぶように循環できる存在である。人のみ…

霊送りーイヨマンテ

人払いをした湖畔の集落、夜の帳がおりた伝統的家屋の中で。祭礼が滞りなく進行し、まだ大任を残している緊張感から酒をあおり横たわる長老らしき男。緊張感からしばし逃れようとしているのか。耳に残る不規則的な口琴の音色。 囲炉裏端にあつらえられた祭壇…

2020年 国内自死率増加に寄せて

見せかけではない本当の豊かさや安心を求めたい 昨年、国内の自死率が増加に転じた。若年層や女性の件数増加が顕著である。現代文明の恩恵に浴している私たちは、死生観について考察することを避けている一面がある。 弱者の声はどれだけ社会に届いているの…

掌に情報の躍る時代に

例えば「人は生きているだけで価値がある」という言葉を聞くと、はたして本当にそうなのかと、天の邪鬼な私は考えます。もちろん様々な状況がありますが、長いとも言えない私の余生を「ただ生きていればいい」という話ではないように思慮するのです。そう考…