例年だと道南のゴールデンウィークは丁度、桜の頃である。だから、観光地でもある函館は近隣からの花見客も集まり、土産屋、宿泊関係などはトップシーズンの書き入れ時となる。そして、5月の2週目からは修学旅行生が入りだす。この賑わいは10月の第2週まで上下動を繰り返しながらも維持される。
函館は湯の川の温泉街から西部地区の異国街までが一本の電車で結ばれていて、途中には五稜郭というささやかな歓楽街もある。縄文やアイヌ、函館文学、幕末の豪商にまつわる展示館など文化的要素も意外にある。そして、小樽に対していえばリアルレトロである。
初夏の陽気を迎え、徐々に地域の風景記事などを増やしていこうと思う。
JR函館駅から木古内方面へ、津軽海峡を左手に見据えながら国道を行くこと約40分、いさりび鉄道当別駅の近くから山側に5分ほど入ったところにトラピスト修道院がある。 トラピストの丘を抱える丸山は鉱山であり、特有の磁場があるとの話を聞いたこともあるが未検証である。道南東部の地図を眺めてみると天然の良港、函館湾の西突端付近に位置していることが読み取れる。 ウィキペディアによると信徒により函館市郊外、当別の原野が寄進されたのは1896年(明治29年)である。男子修道院であるトラピストと、函館空港近くにある女子修道院トラピスチヌを結ぶ線が函館の内湾を覆ったのは興味深い偶然である。当院の別名は灯台の聖母修道院であることから当時、東京以北最大級の都市であった函館の海を象徴的に照らす光(信仰拡大・布教)の足場にするという意志はあったものと考えられる。 トラピスト修道院の桜の見ごろは五月半ば過ぎである。
修道院から25分ほど丘を登ると通称ルルドの洞窟がある。洞窟というよりは小さな岩屋であり、辛うじてという風情で祈祷机が設置されている。洞窟右上に聖母像があり、その印象が強い。
天気が良ければ、ここから修道院と海に浮かぶような函館山を眺めることができる。 旅人であろうか、当地を訪れる神学校の学生が祈りを捧げていることが設置されたノートに記されている。トラピスト修道院はれっきとした宗教施設であるが、地元民には特殊な宗教施設という認識はあまりない。 それは当院製造のトラピストバタークッキーに幼き日より親しんでいるためであるかもしれない。
※クッキー画像はトラピスト修道院HPより